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東京ビッグサイトで開催
Japan Shop IDM Japan Premierブースにおける宮崎木材工業スタンドデザイン

皇居・京都迎賓館・国立劇場・アマン東京などの名だたる建築に歴史を刻んできた宮崎木材工業様。そのスタンドデザインを行うという、身に余るほどの光栄な機会をいただきました。
幕末京都、蛤御門の変の復興を契機に生まれた、大工・家具・職人街「夷川通」(えびすがわどおり)。通称「宮木」(みやもく)さんの歴史はここから始まります。
大手ゼネコンや設計事務所では知らぬ人はない京都の超優良老舗企業。今回IDM Japan Premierに参加されたのは、今後優れた独立系デザイナーとの協業で、この木質意匠、京指物の技術の地平をさらに広げたいとの思いで、出展を決められました。
デザイナーとしてIDMからのアサインを受けたBABIDの命題は、その技術をスタンドデザインで表現し、デザイナーの皆様にさらなるインスピレーションの種にしていただくことでした。
ちなみに澤山は日本でのスタンドデザインは初めて。英国では使用空間を具体的にイメージさせるデザインでバンバン商売するが主流ですが、日本はコンセプチュアルが主流。そんな中、今回は英国流を採用し、実際の空間をイメージし、その空間にいるように回遊できるレイアウトとしました。

BABIDデザインプラットフォームで担当したのは澤山(デザインプロデュース、デザイン)、吉田(リサーチ、グラフィックデザイン)、ガジリア(意匠設計、設計施工監理)の3名。会場でもご説明しました。
ありがたいことに、デザイン主旨が功を奏したと思われ、本当にたくさんの業界の皆様が訪ねてくださると共に、大変すばらしいお褒めの言葉を数多くいただきました。もちろん素材そのものが素晴らしかったことが、その評価の全てですが、私たちもその良さをご理解いただくお手伝いが出来たと思います。
また会場では具体的なお話もいくつも生まれていました。ここからどのような具体的なプロジェクトが生まれるか、本当に楽しみです。

ブース全景。背面パネル、カウンター、天井装飾、照明、指物家具、メッセージをチャコールグレーのバックグラウンドに配しました。
使用空間のイメージは、エントランスロビー、レストラン等のカウンターと背面、ホテルのチェックインカウンター背面、ホテルのベッドヘッドなどなど。商業デザインに関わるデザイナーさんにとって身近でイメージしやすいエリアです。

ブースには、背景に不思議力+迫力満点の曲線象嵌パネルを3枚。これに引き付けられて、皆さん集まってこられます。これが第一の狙い。カウンターでスタッフがお迎え。デザインの可能性のご説明と、実際に奥に入って素材に触れていただき、クオリティの高さを感じていただきます。ここでの説明が終わると、素材の展示台に動いて、職人さんや営業さんが素材ひとつひとつのご説明。
このレイアウトのお陰で、展示を触って確認し、サンプル台でパンフや素材を手に取るフローがうまく出来ています。
ひいき目でなくとも、このブースはいつもにぎやかです。
このまま買いたいというリクエストも実際目の前で。嬉しい悲鳴ですが、残念ながら現品をお売りすることは出来ず、今後本社ロビーで実際に使用されます。同じもの、もっと素晴らしいもの、いくらでも作ることができますから。

取材もたくさんいただけました。インスタライブで宮崎社長と澤山がインタビューいただき、ブースのご説明をしています。こちらのリンクから

ブースの両脇に掲げたメッセージ。右側は宮崎家具様から、左はそのアンサーメッセージとして、係わらせていただいたデザイナーの思いを伝えます。

それでは一つ一つのエレメントをご説明します。
こちらはマーケトリー手法による曲線連続3パネル。模様の元となったのは、夷川通での1930年代からのウィーン分離派様式建築の宮崎家具のショールーム。セセッション様式特有の扇型と直線の連続に、墨による染色を施し、立体的でインパクト抜群の文様を創り出しました。縦のラインのグラデーションは職人が一発で決めたもの。最初の色と最後の色を自由に変えグラデーション出来る技術、さりげな過ぎて目立たないかもしれないですが、すごい技術です。もちろんどのようなテーマの文様でも創り出してくださいます。デザイナーさんたちには様々な挑戦のヒントになればと思っています。

素材にも170年の蓄積が。素晴らしい銘木が体育館数台分も保管される工場。このカウンターではその素材の豊富さに加え、曲げ加工技術のすごさの一端を、この変わった形状で表現してみました。突板をこの直径で曲げる技術、それをアーチで切り取る技術、アーチの中に違う素材を貼り合わせる技術、どれをとっても100名の職人と2名の伝統工芸士を擁する会社ならでは。
皆さんアーチの合わせのスムーズさに驚き、すりすりとあちらこちらに触れています。
角度を変えると様々な表情が見えてくる不思議な造形をデザインしましたが、そんなリクエストにも軽々と答えてくれる職人さん。360度眺めて触っていただきたいピースです。

天板に見られるのは放射状の象嵌細工。樹種の色の違いだけで表現しています。

下左: 象嵌細工にはブラスやステンレスのインレイも可能。引き抜いたり併せたりをご覧入れます。この隙間をアクリルにしたら、複雑な光の極細ラインを持つ壁も作れますね。

下右: 指物技術で釘も使わず作られた照明。けし木のパネルを入れて。どのようなサイズでも、5角形でも6角形でも。当初デザインは、5角形を反転上下で合わせた一組を、幅と高さのサイズを変えて積み重ねた天井高までの超大型照明でしたが、さすがにお忙しいなかでそこまではお願い出来ず発想の元としてこの形。でもそんな姿をぜひ想像してみてください。それが天井から何本もぶら下がったホテルロビーとか、それが軽い結界を作るレストランとか、デザイナーとしてはぜひやってみたいものです。

下左: 宮崎木材工業さんのスタートは京都指物家具。表に出てくる継ぎ手はライン一本でも、中では複雑なほぞが。この継ぎ手と、長年の乾燥を経た最高の状態の木材により、ここまで細く強い家具の制作が可能になります。面材は薄い材を編んだ「けし木」のパネル。このパネルデザインも一から起こせ、そのバリエーションは無限大です。

展示台ではこのほかにも様々な素材を職人さんと営業さんがご説明します。職人さんが来られているブース、実はそんなにないです。職人さんとの会話は、とても貴重です。

以下はお持ち帰りいただく小さな素材です。最近はパンフレットはこういったトレードフェアでは敬遠され気味です。小さくとも、すぐに思い出していただけるものを作りました。
下左:けし木のコースター。普通木をただスライスするとささくれたり、割れたりしますが、これもある特殊技術で加工したことで、とてもなめらかです。お持ち帰りいただけた方々はラッキーでした。製品でもない、このフェアだけの特別なコースターです。

下左: 職人の技術が最も端的に表れるかんなくず。2メートル以上あるものを巻いています。触った感じはもはやシルク。初めて見たかんなくずのクオリティでした。
下右:象嵌細工で制作したQRコードは特設ページへ


BABID デザインプラットフォーム参画メンバー紹介

澤山 乃莉子 インテリアデザイナー BIIDメンバー
一社)BABID代表理事  デザインプロデューサー
一社) キュレーションホテル協会 代表理事  ホテル経営コンサルタント
本プロジェクトではプロデュース、デザイン基本方針策定を担当。
2000年にロンドンでデザインオフィス設立以来、英日で住宅、商業施設、家具デザインなどを手掛ける。「BIID Merit Award 2016」等、日英での受賞や雑誌掲載も多数。プロ向け欧州トレンドレポートやデザイン塾主宰など、執筆、教育、講演分野でも活躍。
紹介&施工事例へ(BIIDJPサイト)

吉田 恵美 インテリアデザイナー、テキスタイルデザイナー BIIDメンバー
ヨシダプランニングオフィス主宰
今プロジェクトでは、リサーチならびにコンセプトデザイン、背面パネルを担当。
美術大学にて広告デザインやブランディングを学ぶ。卒業後、インテリアテキスタイルメーカー商品企画部に入社。ホテル及び商業施設向けのデザイン担当、自社ブランドの商品開発などを経て独立。ホテルやメーカーとのオリジナル商品開発、デザイン企画など、プロとの協業実績多数。
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ガジリア恵理子 インテリアデザイナー BIIDメンバー
JIC Co. Ltd.代表
本プロジェクトでは意匠設計、カウンターデザインを担当。下町工房で江戸指物技術を学んだことが転機となり、インテリアデザイナーとしての経歴をスタート 。2017年ICSカレッジオブアーツでMaster of Arts in Japanese Interior Architecture and Designを取得し、現在は個人宅のリノベーションからホテル、商業ビル等多岐にわたり意匠提案、施工に携わる。
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