熱海一戸建て住宅リノベーション
成長する家族の新たなステージに寄り添う家
親世代が建築した、熱海湾を一望する築40年250㎡の和風在来工法の戸建てを引き継ぎ、大切に住み継いできたご一家。
2人の息子さんは高校・大学へと進学し、家族は新たなステージに進もうとしています。
大規模なメンテナンスの時期を迎えたのを機に、これからの家族のあり方に沿った住宅に改修したいとのご相談をいただきました。
そこで、家族を繋ぐ最も重要な「音楽」を生活の中心に据え、同時に熱海の絶景をもっと身近に取り込み、また人をもてなすことも多いご家族にとっての最適なレイアウトを考案しました。
さらに、「これからアートを生活に採り入れ、子供たちのためにアートのポートフォリオを創り始めたい。アートを今後増やして楽しんでいける壁や棚も作ってほしい。」というリクエストにも答え、アートディレクションの方向性を示す最初のキーピースたちもご提案しました。
工事に携わったのは熱海の大工集団若井工務店。出来合いの製品は使わず、一本の木材から創り出す大工仕事をメインに、左官師、塗り師、建具師、表具師などが、伝統工法と自然素材だけで仕上げた空間です。
カラースキームは、熱海の美しい自然の色「碧」、目の前で刻々と表情を変える海と山の碧を取り込みました。
静岡産ヒノキ材をふんだんに使った大工仕事と碧のコントラストがみずみずしく、どこから見ても美しく、機をてらわない華やかさをもつインテリアへ仕上げています。
Design Concept 「碧のシンフォニー」
海と山の碧が、部屋を移るごとに色味を変えて繋がります。
和風建築とグランドピアノの要素である黒と、ガラスの艶っぽさをアクセントに織り交ぜながら、優雅な空間を表現しました。
レイアウト変更部の特徴
<Before>
<After>
レコードディスプレイを背景にグランドピアノを擁する音楽サロンを中心に、左側にはフォーマルにも使えまたTVルームともなるファミリーリビング、右側のかつてベッドルームとクローゼットが占めていた空間は、お客様も招いてパーティもできる、アイランドカウンターを持つ広いファミリーキッチンへと生まれ変わりました。
この過程でいくつもの柱や壁を撤去しましたが、耐震計算の上安全も確保し、むしろ残す柱をインテリアに取り込む工夫で、きれいに空間を広げました。
さらにダイニングに大きな開口とウッドデッキを設けたことで、より広く開放的に可能性を広げました。
また、通常散漫になりがちなペット回りですが、キッチンの一角にDog Stationも設計し、ワンちゃんにとって引っ越したその日からお気に入りのスペースとなりました。
さらに、勝手口と浴室エリアは全体のレイアウト変更により、マッドルーム、ファミリーバスルームとして、使い勝手を飛躍的に高めています。
必要箇所で収納を可能にする収納造作を各所に導入することで使い勝手を上げ、加えて随所にアートを楽しめる棚や壁を配しました。これでどこから見ても美しく片付けやすい空間となりました。
LDK
<Before>
<After>
リビングとサロンの間はできるだけ大きく開口部を取りたかったのですが、2階を支える取れない柱があったため、柱を挟んで3枚の同じ格子建具を設置することで部屋にリズムを生み、格子がデザインの核になりました。サッシも高さを上げる事で、外からの光が部屋の奥まで入り、天井の高さがより生きています。
棟梁が、景色が見事なケヤキの一枚板を天板に用い制作したコンソールテーブル。洋室における床の間としてアートの場を演出します。これからアートポートフォリオの成長と共に様々なアートが彩っていくでしょう。
ダイニングには海を眺望できる大きなピクチャーウィンドウを設置し、
シンメトリーに配した飾り棚と共にダイニングルームのしつらえを構成します。
ダイニングテーブルはヒノキ材から大工が制作した特注品。
この整った空間に大きさの違うガラスの照明がリズミカルに空間を引き立てます。
深い海の色をイメージしたブルーの多治見窯変タイルを圧倒的な背景に、「皆で動ける」をテーマに、アイランドカウンターを中心に、パントリーと十分な収納も備え、広く使いやすく改装されたキッチン。
結果、常に家族がここに集まるファミリーキッチンとなりました。
音楽サロンは、クラシック好きの息子さんが集めた古いレコードジャケットが一枚一枚絵画のように棚へ飾られ、グランドピアノとコントラバスの演奏を楽しめる空間にしました。
いぶし銀にシルクオガンザを貼りこんだゴージャスな和紙壁紙が空間の格調を高めます。
建具職人による縦桟が印象的な三連の建具を左右対称に配し、閉じたときにはその桟の連なりが美しく、開いたときは引き込みで開放的な空間として使えるという、高機能な空間レイアウトを実現しました。
向かい側には海を眺めながら音楽を楽しめる奥行き120cm、幅240cmの大型デイベッドを設置、最高の観客席です。
ベッド下には大型収納も設置しました。
ファミリーバスルーム
レイアウト変更により、脱衣所に大型収納・洗濯機・物干し・アイロン台を擁する広いファミリーバスルームを創りました。
浴槽は静岡産の桧風呂を採用、壁の上部と天井にも桧を貼り、むせぶような桧の香りに癒されます。もちろんヒノキ風呂のメンテナンス法も併せてご案内しています。
浴室の多治見産モザイクタイルは、一つ一つ色のグラデーションがあって、近くでも遠目でも美しい浴室となりました。
疲れて帰ってきて毎日このお風呂に入るのが楽しみになったと、大変喜んでいただいています。
大切に住み継がれてきた日本家屋は、この改装を一つの節目として、ここからさらに長く長く家族の暮らしに寄り添っていってくれると願っています。
建築、インテリアデザイナー紹介
湯下奈津子
BABID Design Platform BIID正式メンバー 一級建築士 インテリアデザイナー
一級建築士事務所アトリエ木香代表
本プロジェクトでは、インテリアデザイン・意匠設計を担当
明治大学経営学部卒業後、近鉄ホーム建設へ営業として就職。3年の経験を経て設計部へ転属し、主に住宅の企画から注文住宅の設計を現場通して本格的に学ぶ。2004年よりヨーロッパ建築スタイルを得意とするボッテガベルタ設計事務所にて美しさにこだわる住宅デザインの実施設計を担当、2012年よりアトリエサラ設計事務所にて女性目線の住まいやすさにこだわる住宅設計デザインを設計施工監理まで担当。二つの異なるスタイルの設計経験を経て一級建築士事務
所アトリエ木香設立。2019年英国ロンドンにてインテリアデザインスクールにてディプロマを取得、インテリアも重視した室内からも考えられた美しい住宅設計に取り組んでいる。
紹介&施工事例へ(BIIDサイト)
菅原貴美子
BABID Design Platform BIID正式メンバー インテリアデザイナー
Entre Deux 代表
本プロジェクトでは、インテリアデザイン・FF&E・アートディレクションを担当
東京都生まれ。立教大学卒。早稲田大学芸術学校にて建築デザインを学ぶ。
2000年より、設計事務所、大手不動産ディベロッパーにて、戸建て住宅やマンションの空間デザイン、大規模分譲住宅の企画開発に携わる。2016年より、インテリアデザイン事務所を主宰。2019年、The Interior Design School LONDON にてProfessional Development Diploma 取得。
一方家族の都合にて、2年間の台湾駐在生活、10年間のオランダ駐在生活を経験し、各地の住空間はもちろん、歴史的建築物から最新トレンドまで、訪れた数多くのデザイン空間は、提案の幅を広げ、豊かでオリジナルな空間づくりにおいて、欠かせないものとなっている。
紹介&施工事例へ(BIIDサイト)
FF&E
BABID 渡邉弓枝
デザインプロデュース、監修、基本レイアウトプランニング
BABID 澤山乃莉子