澤山乃莉子監修 インテリアコラム
第14回「ウィリアム・モリスが残したもの」
皆さんこんにちは。【世界的インテリアデザイナーを日本でコミッション】インテリアプロデュース協会、BABIDです。
代表の澤山乃莉子が20年余りのロンドン生活で学び、構築してきたインテリアセオリー・ライフスタイルについてお話していこうと思います。
先日、イギリス繫がりということでお誘いを受け「マイ・ブックショップ」という映画の試写会に参加させていただきました。
舞台は1959年のイギリス。
ある海岸地方の町。
戦争で夫を亡くした女性フローレンスが、書店が1軒もなかった町で、夫との夢だった書店を開業しようと奮闘します。
世界で最も権威ある文学賞の1つである英国ブッカー賞受賞作家ペネロピ・フィッツジェラルドの小説「ブックショップ」を
『死ぬまでにしたい10のこと』のイザベル・コイシェ監督が映画化しました。
50年代イギリスの雰囲気や、独特な色調やフラワープリントが素敵なファッションや家具、雑貨の数々を垣間見ることができ、
誰もがこの映画の世界に入り込んでみたい、と思うような魅力がたっぷりの一作でした。
特に印象的だったのが、主人公フローレンスの寝室。
物語の中では「Old House」と呼ばれ、歴史的価値のある建築として扱われていました。
ウィリアム・モリス(1834 – 1896)。
室内装飾史を語る上では欠かす事のできない人物です。
建築・インテリアデザイナーであり、社会主義者であり、小説家であり、詩人でもありました。
モリス商会というデザイン会社を経営しながら、1880年ごろからは
ご存知「アーツ&クラフツ運動」と呼ばれる社会運動に注力しました。
この運動はモリス商会をともに運営した仲間・弟子にひきつがれ、世界的なムーブメントになります。
ちなみにこちらの壁紙は「Compton」というパターン。
モリスが1896年、最後にデザインしたとも言われています。(諸説あり)
モリス商会が所有する物件で、ハドソン家のコンプトン・ホールのためにデザインされました。
花と枝葉が伸びやかに描かれたモリス独特のパターンは、
劇中でも見られるイギリスらしい、雄大な自然を連想させます。
そしてこちらは、BABID国内施工例第1弾、
日本の古民家とイギリスデザインが見事に融合したベーカリーショップ
「ブリティッシュベーカリー Whimsy(ウィムジー)」です。
同じくウィリアム・モリスのパターン「いちご泥棒」を使っています。
こちらのパターンには可愛らしい小鳥とやはり伸びやかな草木が描かれています。
デザインしてくれたのはBIID(https://biid.org.uk/)デザイナー
「tessuto(http://tessuto.co.uk/)」のSusie Rumbold氏。
プロデューサーを務めたのはBABID代表澤山乃莉子。
ウィリアム・モリスのデザインには、確かなコンセプトがあり、
その思想は今でもイギリス人の家に対する想い入れの強さとして受け継がれています。
それを表すモリスの有名な言葉で、こんな一節があります。
「Have nothing in your house that you do not know to be usuful, or believe to be beautiful.」
― 役に立たないもの、美しいと思わないものを家に置いてはならない。
この言葉は今でもイギリス人の誇りであり、
世界でも1・2を争うインテリア産業を支える大切なマインドです。
ウィリアム・モリスについては語れど語れど、語りきれません!
またどこかで大特集したいと思いますが、さらに専門的な見解を学びたい方はぜひ澤山塾へ。
「マイ・ブックショップ」の舞台となったのは、モリス没後60年余り、世界大戦後のイギリスでした。
世界の都市ではすでにアール・ヌーボー、アール・デコを経てシンプルな工業製品が蔓延する世の中になりつつあったでしょう。
そんな激動の時代、イギリス人である主人公フローレンスは、なぜこの場所を愛し、選んだのでしょうか?
歴史的に培われたイギリス人たる感覚が少なからずあったのかもしれませんね。
ぜひ劇場に足を運び、変わりつつある儚くも美しい時代に想いを馳せて下さい。
「マイ・ブックショップ」
公開表記:3月9日(土)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他にて
全国順次ロードショー
監督&脚本:イザベル・コイシェ
出演:エミリー・モーティマー、ビル・ナイ、パトリシア・クラークソン
原作:「ブックショップ」ペネロピ・フィッツジェラルド著(ハーパーコリンズ・ジャパン*3/1刊行)
2017|イギリス=スペイン=ドイツ|英語|カラー|5.1ch|DCP原題:The Bookshop配給:ココロヲ・動かす・映画社○